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東京高等裁判所 昭和43年(ネ)193号 判決 1968年6月03日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人代表者は「原判決中控訴人敗訴の部分を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用、認否は、控訴人代表者において「被控訴代理人は、控訴人が本件建物部分を賃借していることを承知の上で、岸個人と被控訴人主張の和解をしたものである」と延べ、証拠(中略)

認めたほかは、原判決事実摘示の通りであるから、これを引用する。

理由

当裁判所も被控訴人の請求のうち原判決で認容された部分は理由があると認めるものであり、その理由は原判決のそれと同一であるから、これを引用する。

なお、控訴人代表者岸清は、当審において、甲第二号証中控訴人主張の部分はあとで勝手に書入れられたものである旨供述しているけれども、該供述は、弁論の全趣旨と対比して信用できないし、同号証中の岸の署名、印影の真正に争いがなく、他に同号証の該部分が真正に成立したことを疑わせるような証拠もないから、該部分は真正に成立したものと推定すべきである。さらに、岸は、原審及び当審において、同号証は、控訴人としては拒絶する旨を断つて、岸個人として署名したものであり、被控訴人主張の和解も岸個人としてしたものである旨供述しているけれども、控訴人が依然本件建物部分を賃借してこれを使用しているのでは、岸個人だけにその明渡を約束させても無意味であるし、甲第四号証によれば、右和解においては岸は被控訴人に対し和解成立のときから、本件建物部分明渡まで一か月一万円の割合による損害金を支払い、被控訴人は岸に対し、遅滞なく右明渡を履行することを条件として、五万円の移転料を支払うことと定められているが、控訴人が依然賃借人として一か月一万円の賃料を支払うのに、岸が二重に損害金として一か月一万円の損害金を支払うわけもなく、控訴人が依然賃借人として本件建物部分の使用を続け、被控訴人がこれを使用できないのに、岸だけがこれから退去したからといつて、被控訴人が同人に五万円の移転料を支払うことも考えられないから、右各供述部分は到底信用できない。

よつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条を適用し、主文のように判決する。

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